一 土をつくる人がいて
聖護院蕪(しょうごいんかぶら)は京の冬の伝統野菜。
初霜のおりる頃、まるまると育ったかぶらが、作り手の自信と共に届けられる。
二 とれたてのみずみずしさを
霜月、師走……、
青々とした見事な葉付きかぶらが、ひんやりとした作業場に積まれてゆく。
丹精を込めて育てられた旬の幸が、京の手にゆだねられる。
三 ひと冬ごとに熟練の技
「千枚ほどに」削るがごとく……。
右手でかぶらを掻くと同時に、大カンナの下では左手がそれを揃えてゆく。
シュッシュッという快い音と飛び散るかぶらのしぶき。
まさに技(わざ)の極致。
四 一心に、手塩にかける
京の味は、職人の勘がものをいう世界。
塩かげんひとつで味がきまり、うまさがつのる。
永年の積み重ねが川勝總本家の味となる。
五 伝統の積み重ねから
下漬から本漬へ。
樽の底いちめんにかぶらを敷きつめては選び抜かれた昆布を、
その上にまたかぶらを……。
門外不出の甘酢を注ぎ、独自の味に仕上げてゆく。
素材と人の手と伝統が、一枚一枚に重なってゆく。
六 底冷えもまたかくし味
昆布の旨みと甘酢をたっぷり吸い込みながら、完成の時を待つ。
素材と技、そして京の底冷え。
すべてが揃ってこその味が出来上がる。
七 こころ待ちの冬だより
ツヤのある白い肌。
昆布とかぶらのそれぞれの風味、甘酢の深い味わい。
しっとり、ひんやりとした舌ざわり。
千枚漬は京の冬のちいさな幸せ。
皆様のお手元にお届けする、こころ待ちの冬だより。